展示会が終わって2週間後、名刺の束を前にして私はいつも同じことを考えます。「この中の何件に、来週電話できるだろう」。以前のTSUNAIDEは、名刺をもらったら全員にかけていました。300件もらったら300件かける。それが誠実だと思っていたんです。

でも結果は伴いませんでした。かけた本人が疲弊するだけで、商談の日程は増えなかった。当社が測っているのは名刺の枚数ではなく「次回商談の日程を確定できた件数」です。この数字で見ると、全員に電話していた頃のほうが、実は成績が悪かったんです。

かける件数を減らしたら、アポ率が5倍になった

あるテレアポ案件で、リストを絞り込みました。具体的には、業種・従業員規模・過去の接点の有無で優先順位をつけて、上位30%だけに架電を絞ったんです。残りの70%は捨てたわけではなく、メールとDMに回しました。

結果、アポ獲得率は0.6%から3.2%まで上がりました(当社支援案件・2026年時点の実績値です)。かける件数は減ったのに、確定した商談の数は増えました。理由は単純です。電話をかける担当者の集中力と時間は有限で、全員に同じ熱量で対応することは物理的にできないからです。薄く300件やるより、濃く90件やったほうが、最後まで話を聞いてもらえる確率が上がるんです。

「で、どうするか」— 分ける基準を先に決める

ここで大事なのは、分ける基準を「かけながら」決めないことです。かけ始めてから「この人は温度高そうだから優先しよう」とやると、担当者の主観に頼ることになって、結局全員にかけたくなります。会期中、または会期直後にリストを見て、機械的に分けるべきです。

当社では展示会の名刺を、その場でのやり取りをもとに3段階に分けています。

  • その場で「見積もりが欲しい」「導入検討中」と言われた → 即架電、翌営業日以内
  • ブースで5分以上滞在し、具体的な課題を話した → 架電、ただし1週間以内
  • 名刺交換だけ、または立ち話程度 → メール・DMのみ、架電しない

この3段階目、つまり「架電しない」と決めるのが一番難しいんです。もらった名刺にかけないのは、なんとなく失礼な気がしてしまう。でも、そこに時間を使うと、1段階目・2段階目への対応が薄くなります。優先順位をつけるというのは、結局「やらないことを決める」ことなんです。

電話をかける時に、何を言うか

リストを絞っても、話す内容が的を外していたら意味がありません。展示会で名刺交換した相手に電話をかける時、私たちが最初に言う一言はこれです。

「先日展示会でお話しした際、〇〇の管理をまだ紙とExcelでやられているとお聞きしたんですが、今もその状態ですか?」

ポイントは「まだその状態ですか」という聞き方です。展示会で聞いた具体的な話を、そのまま覚えていて聞いてくる。これだけで相手の反応が変わります。「覚えていてくれたんだ」という印象が生まれるからです。逆に「先日展示会でお世話になりました。弊社のサービスについてご案内させてください」から始めると、営業電話だと即座に判断されて切られます。

正直、地味な作業です。名刺の裏にメモした内容を、電話をかける前に必ず読み返す。それだけのことなんですが、これをやるかやらないかで、次回商談の日程が確定するかどうかが変わってきます。

AI開発も営業代行も、結局この考え方は同じ

この「絞って濃くする」という発想は、展示会支援だけの話ではありません。AI開発の支援でも、最初に全部の業務を自動化しようとする会社は失敗しやすいです。当社の支援案件では、試作から本番運用への移行率は82%ですが(当社支援案件・2026年時点の実績値です)、これは最初に対象業務を1つか2つに絞った案件の数字です。あれもこれもと手を広げた案件は、途中で止まることが多いんです。

営業代行も同じで、リストを全部追いかけるのではなく、確度が高い層にだけ人の手をかけて、残りは仕組みで拾う。これを50社以上の支援の中で繰り返し確認してきました。派手な戦略ではなく、「どこを削るか」を先に決めて、残ったところに全力を出す。地味ですが、これが一番数字に効きます。

実務チェックリスト

  • 展示会の名刺を、接点の深さで3段階に分類する
  • 会期後48時間以内に、優先度上位の名刺だけ架電リストに入れる
  • 架電前に、名刺の裏メモか会話内容を必ず読み返す
  • 会期前に温度別テンプレを3種類つくる
  • 架電しないと決めた層への自動送信メールを事前に準備する
  • 週1回、確定した商談の件数だけを数字で振り返る
  • 次回のリスト分類基準を、前回の結果を見て1つだけ更新する