展示会のブースで、立ち止まってくれた人がいる。私はすぐ名刺交換をしようとして、こう言いました。「本日はありがとうございます、弊社は〜」。相手は「あ、大丈夫です」と一言残して、次のブースへ歩いていきました。3秒でした。
この経験、私だけじゃないはずです。展示会でもテレアポでも、初対面の30秒で相手は「この人の話を聞く価値があるか」を判断しています。会社の説明でも、商品の魅力でもありません。判断しているのはただひとつ、「これは自分に関係があるか」です。
相手は会社説明を聞きに来ていない
正直、地味な話です。でも事実なので書きます。展示会に来ている人は、あなたの会社の歴史にも理念にも興味がありません。自分の業務の困りごとが解決するかどうか、それだけを見ています。だから最初の一言で会社名を名乗るのは、実は逆効果になることが多いんです。
私が現場で使っているのは、こういう聞き方です。
「〇〇の管理、まだ紙やExcelでやられてません?」
これだけです。会社名も商品名も出しません。相手の業務に直接触れる質問を、断定気味に投げます。「〜ですよね」ではなく「〜ではないですか」くらいの、少し踏み込んだ聞き方がポイントです。反応が薄い一般論の質問より、具体的に業務名を出したほうが、相手は自分ごととして反応してくれます。
判断の分かれ目は「相手の足の向き」
ここが実務で一番大事なところです。声をかけた瞬間、相手の反応は大きく2つに分かれます。
ひとつは、足がこちらを向いたまま止まる反応。この場合は畳みかけずに、もう一段具体的な質問を重ねます。「今、月に何件くらい対応されてますか」というように、数字を聞く質問に切り替えます。数字が出てきたら、その場で名刺交換に進んでいい合図です。
もうひとつは、足が通路側を向いたまま止まる反応。これは「一応聞くけど、すぐ離れる準備はしている」というサインです。この場合、無理に引き止めても商談にはつながりません。私は資料だけ渡して「もしよかったら、これだけ見ておいてください」と伝えて、深追いしません。むしろこのタイミングで粘ると、後で「あの会社はしつこい」という印象だけが残ります。
足の向き、というと細かすぎると思われるかもしれません。でも現場では、この体の向きの差が、次の商談化するかどうかをかなりの精度で分けています。当社支援案件・2026年時点の実績値ですが、設計込みで展示会支援をした場合、1回あたり平均20件の商談化につながっています。この数字は、ブースの装飾や配布物の工夫よりも、最初の30秒の会話設計によって決まる部分が大きいと感じています。
テレアポも同じ。最初の一言でリストの精度が試される
これは展示会に限った話ではありません。テレアポでも同じ構造です。当社の案件で、テレアポのアポ獲得率が0.6%から3.2%まで上がったことがあります(当社支援案件・2026年時点の実績値、リスト設計を見直した好調案件での数値です)。このとき変えたのは、話し方のトークスクリプトではなく、電話をかける前の「誰にかけるか」というリストの精度でした。
ただ、リストが良くても、最初の一言が的外れだと切られます。私が電話でよく使うのは、こういう出だしです。
「展示会の出展、来期も同じ規模でやられる予定ですか」
いきなり自社の紹介をせず、相手の来期の予定に触れます。これも会社名を名乗る前に、相手の状況に踏み込む質問です。「はい」でも「いいえ」でも会話が続く聞き方にしているのがポイントです。
AI開発の商談でも、判断されているのは「今すぐ動くべきか」
AI開発の相談でも構造は同じです。相手は「AIで何ができるか」を知りたいのではなく、「今の自分の業務が、今すぐ変わる必要があるか」を判断しています。だから最初に技術の話をすると、だいたい温度が下がります。私は「今、その作業は何人で、月に何時間かかっていますか」と聞くところから入ります。時間と人数が出てきた瞬間に、相手の中で「これは検討する価値がある」というスイッチが入ります。
ちなみに当社支援案件では、AI開発を試作から本番運用まで移行できた割合は82%です(当社支援案件・2026年時点の実績値)。試作で終わる案件との違いは、最初の相談時点で「業務のどこが痛いか」を数字で握れているかどうか、というのが私の実感です。
結局、最後は人がやり切るかどうか
ここまで書いてきたことは、全部トークの型の話です。でも型だけ覚えても、現場では通用しません。相手の反応を見て、粘るか引くかを一瞬で判断する。この判断は、台本には書けません。私はこれまで50社以上の支援に関わってきましたが(当社支援実績)、うまくいった案件はいつも、担当者が現場で泥臭く反応を拾い続けていた案件でした。
派手な戦略よりも、目の前の一人の反応を見て言葉を変える。地味ですが、これに尽きます。
- 会期前に温度別の声かけ文言を3種類つくる
- 声かけの最初の一文から会社名を外す
- 相手の足の向きで「深追いする・しない」を即判断する
- テレアポ用リストを架電前に業種・規模で絞り込む
- 商談時に必ず「時間」か「人数」の数字をひとつ聞き出す
- 名刺交換ではなく次回の日程確定を目標に会話を設計する
- その日の会話で反応が悪かった一言を終業後に書き出す
