展示会の後、名刺が300枚。当社の若いメンバーがそれを全部リスト化して、上から順に電話をかけていました。1日80件。手は止まらないのに、次回商談の日程はゼロ。私はその様子を見ながら、正直「これは違う」と思いました。
電話の本数を増やすことと、商談が決まることは、別の話なんです。むしろ、かける相手を絞った瞬間に数字が動き出す。今日はその話をします。
名刺の枚数を追うと、なぜ数字が落ちるのか
展示会で集めた名刺は、成果ではありません。あくまで「まだ何もわかっていない相手のリスト」です。それを全部にかけるのは、地図を見ずに歩き出すようなものです。
当社では、展示会1回あたりの商談化を平均20件と置いています(当社支援案件・2026年時点の実績値です)。この数字は300枚全部に電話をかけて出た数字ではありません。ブースでの会話メモから「温度」を仕分けて、上位だけに絞って架電した結果です。
温度が低い名刺に電話をかけると、当然こう言われます。
「え、そちらどちら様でしたっけ」
この一言が出た時点で、その商談化の可能性はほぼゼロです。ここに時間を使うと、本来かけるべき相手への架電が遅れます。かけた本数がKPIになっている現場ほど、この罠にはまります。
判断の分かれ目は「会期中の反応」にある
絞る基準は、勘ではありません。会期中のメモに残っている、具体的な反応です。
私が現場でメンバーに伝えているのは、この3行だけです。
- ブースで自社の課題を自分の言葉で話した相手は、即日または翌営業日に架電する
- 名刺交換だけで会話がなかった相手は、まずメール1本で温度を確かめる
- 「予算がない」「今期は動かない」と明言した相手は、当面架電リストから外す
ここが判断の分かれ目です。「話した内容がある」か「ない」か。それだけで、かける優先順位が決まります。感覚で「良さそうだったから」で選ぶと、後で必ずブレます。
絞り込んだリストに対して、実際に使っている一言はこれです。
「〇〇の管理、まだ紙でやられてません?」
これは、ブースで相手が話していた課題をそのまま拾って聞き返しているだけです。一般論を聞いているわけではありません。会期中のメモがあるから言える一言です。この一言が刺さった相手だけが、次の商談に進みます。
リスト設計を変えたら、獲得率が5倍になった理由
これはテレアポの案件でも同じでした。ある案件では、アポ獲得率が0.6%から3.2%まで上がりました(リスト設計を見直した好調案件での実績値です)。かけた本数を増やしたわけではありません。むしろ架電対象は絞りました。
何を変えたか。ひとつだけです。「今、困っていそうな会社」だけを狙って、それ以外は一旦置いたんです。忙しい時期の会社に電話しても、話す時間すらもらえません。逆に、人手不足や繁忙期の直後で「何か変えたい」と思っているタイミングの会社には、話が通ります。
ここでも、どういう時にAを選び、どういう時にBを選ぶかがはっきりしています。相手の業種の繁忙期がわかっているなら、その直後の1〜2週間に絞って架電する。わからないなら、まず1回のメールで反応を見て、そこから絞る。順番を間違えると、せっかくのリストを潰してしまいます。
AI開発も営業代行も、最後は「絞ってやり切る」に落ちる
これは展示会だけの話ではありません。AI開発の支援でも、試作から本番運用に進む案件は82%です(当社支援案件・2026年時点の実績値です)。この数字も、最初に全部の要望を詰め込まず、使う場面を絞ってから作った案件で出ている数字です。機能を増やすほど、現場で使われなくなります。
営業代行でも同じです。リストを絞って、架電のトークも絞って、追いかける相手を絞る。派手なやり方はどこにもありません。正直、地味です。でも、この地味な絞り込みをやり切った案件だけが、次回商談の日程を確定できています。私はこれまで50社以上の支援をしてきましたが、うまくいった案件はほぼ全部、この「絞る」を徹底していました。
実務チェックリスト
- 会期中のメモに、相手が話した課題の言葉をそのまま残す
- 会期終了翌日までに名刺を温度別に3段階に仕分ける
- 温度別に架電テンプレを3種類つくる
- 「予算なし」「今期動かない」と明言した相手は架電リストから外す
- 相手の繁忙期を調べて、架電のタイミングを1〜2週間に絞る
- 架電後に「進んだ理由」と「切られた理由」を1行でメモに残す
- 次回の架電リストを作る前に、前回のメモを必ず読み返す
