ブース設計の打ち合わせで、担当者にこう聞いたことがあります。「今回のゴール、何にしますか」。返ってきたのは「まずは認知拡大で」でした。悪気はないんです。でも私は、この一言が出た瞬間に、ちょっと身構えます。なぜなら「認知」は、会期が終わったあとに一番検証しづらい目的だからです。

「認知」は測れないから、みんな名刺の枚数で誤魔化す

認知拡大をゴールにすると、現場は必ず「数えやすいもの」に逃げます。その代表が名刺の枚数です。300枚集まった、去年より多い、良かった。会議ではそれで拍手が起きます。でも私はこの拍手を、正直あまり信用していません。名刺は「もらった」だけで、その後に何も起きていないケースがほとんどだからです。

TSUNAIDEでは、展示会の成果を名刺の枚数では測りません。「次回商談の日程を確定できた件数」で測ります。会期中にその場でカレンダーを開いて、日時を入れる。これができて初めて1件とカウントします。地味です。でもこの地味な1件が、後日の電話一本より確実に商談につながります。

目的が「認知」だと、ブースの会話まで変わってしまう

これは設計だけの話じゃありません。目的が曖昧だと、ブースに立つ人の会話まで変わります。「認知拡大」を掲げたチームのブースを見ていると、会話がこうなりがちです。

「弊社はこういうサービスをやっておりまして、パンフレットお持ちください」

これは説明であって、会話ではありません。相手は聞き流して名刺だけ置いて去っていきます。一方、商談化を目的にしているチームは、最初の一言からして違います。

「〇〇の管理、まだ紙でやられてません?」

この一言は、相手の業務を想像して投げる質問です。「はい」でも「いいえ」でも会話が続きます。認知目的のブースでは、こういう問いかけがほとんど出てきません。なぜなら「知ってもらえればいい」というゴールには、相手の課題を掘る動機がないからです。

判断の分かれ目:ブースに来た人を「話す」か「流す」か

ここが現場での一番の分かれ目です。ブースに人が立ち止まった瞬間、声をかけるかどうかを一瞬で判断しないといけません。私が現場で使っている基準はシンプルです。

相手が展示物やパネルを3秒以上見ていたら、話しかけます。逆に、通路を歩きながら視線だけ流している人には、声をかけません。ここで無理に呼び止めると、相手は防御姿勢に入って、本音の課題を話してくれなくなるからです。

そして声をかけたあと、相手が最初の質問に「うちは大丈夫です」と答えたら、そこで一度引きます。深追いしても商談化率は上がりません。逆に「実はそこ、困ってて」と少しでも本音が出たら、その場でカレンダーを開く。ここで「後日連絡します」と言ってしまうチームが一番多いんですが、それは高い確率で流れます。会期中に日程を確定できるかどうかが、すべての分かれ目です。

AIも営業代行も、結局この「その場で決める」を支えるための道具

TSUNAIDEは展示会支援を主軸に、AI開発と営業代行もやっています。よく「なぜこの3つなんですか」と聞かれるのですが、答えは単純です。展示会で拾った温度感の高い相手を、逃さず商談まで持っていくために、AIと営業代行が要るからです。

例えば、会期後のテレアポ。以前、あるリストではアポ獲得率が0.6%でした。低すぎます。原因はリストの作り方にありました。業種と規模だけで絞っていて、展示会での接点の温度を全く反映していなかったんです。そこでリスト設計を見直して、会期中の会話メモを紐づけ直しました。結果、同じ市場でアポ獲得率が3.2%まで上がりました。これは当社支援案件・2026年時点の実績値です。数字が良かったのは、リストの精度ではなく、展示会での「誰が何に困っていたか」という記録が生きたからです。

AI開発の話も同じです。試作を作って終わりのプロジェクトを、私は何度も見てきました。当社が支援した案件では、試作から本番運用まで移行できた割合が82%です(当社支援案件・2026年時点の実績値)。これも展示会の話と根っこは同じで、「作って終わり」にせず、現場が実際に使う形まで泥臭く付き合うかどうかで決まります。

私自身、これまで50社以上を支援してきました(2026年時点)。振り返ると、うまくいった案件はどれも派手な戦略ではなく、「会期中にその場で日程を決める」「試作を現場で使い倒す」といった地味な実行を最後までやり切った案件でした。正直、地味です。でもその地味さが、次の商談を生みます。

  • 展示会のゴールを「認知」ではなく「商談化件数」で会議の資料に書き直す
  • 会期前に温度別の会話テンプレを3種類つくる
  • ブースで3秒以上滞在した人にだけ声をかけるルールをスタッフ全員に共有する
  • 会期中にその場でカレンダーを開き、次回日程を確定させる
  • 会話メモを商談後のリスト設計に紐づけて残す
  • 会期後1週間以内にテレアポの台本を接点の温度別に分ける
  • 試作段階で終わらせず、運用開始日をその場で決める