資料作成や問い合わせ対応の一部にAIツールを試験的に導入したものの、現場から「前より早くなった気がする」という感想以上の情報が出てこない。そんな状況に困っている担当者は多いのではないでしょうか。感覚ではなく数字で効果を確かめたいが、何を測ればよいのか分からない、という声もよく聞きます。

たとえばという想定例ですが、問い合わせメールの一次回答文をAIに下書きさせる運用を始めたとします。担当者の印象は良くても、実際に確認すると下書きの修正に時間がかかり、結果として以前と作業時間が変わらないということもあり得ます。効果を確かめるには、感覚ではなく「作業時間」と「手戻り」という具体的な指標に落とし込む必要があります。

作業時間はどこからどこまでを測るか

作業時間を測ると言っても、AIが出力するまでの時間だけを見ても意味がありません。実務上意味があるのは、担当者が着手してから成果物が完成するまでの「一連の作業時間」です。AIの下書きを受け取った後、内容を確認し、修正し、承認を得るまでを含めて測ります。

比較のためには、AI導入前の同じ作業にかかっていた時間も必要です。記録がない場合は、直近1〜2週間の作業をあらためて計測し、仮の基準値とする方法があります。目安として1週間程度の記録で傾向はつかめますが、業務の繁閑によって差が出るため、断定的な結論は避けるべきです。

「このAI活用によって、着手から完了までの時間は何分短縮できていますか。修正にかかる時間は含めていますか」

この問いを現場に投げかけると、多くの場合「下書き作成は速いが、確認と修正に意外と時間がかかっている」という実態が見えてきます。

手戻りの発生箇所を具体的に記録する

手戻りとは、一度完成したつもりの作業が、確認や承認の段階で修正を求められて差し戻されることです。AI活用の効果を測るうえで、手戻りの回数と内容は作業時間と同じくらい重要な指標です。

記録する際は、次の2点を分けて管理します。一つは「AIの出力自体の誤り」、もう一つは「人が見落として承認してしまった誤り」です。この二つを混同すると、AIの精度の問題なのか、確認体制の問題なのかが分からなくなります。想定例として、AIが生成した文章に事実誤認が含まれていたケースと、担当者の確認漏れで誤字がそのまま配信されたケースでは、対策がまったく異なります。前者はAIに渡す情報や指示の見直しが必要で、後者は確認体制の強化が必要です。

Aを選ぶかBを選ぶかの判断基準

効果測定の結果、次に進む選択肢は大きく二つに分かれます。

A:既存のAIツールの使い方や運用ルールを見直すを選ぶのは、作業時間の短縮は見られるが手戻りが多い場合や、特定の担当者だけがうまく使えている場合です。この場合は、プロンプト(AIへの指示文)のテンプレート化や、確認項目をチェックリスト化するなど、運用改善で対応できる可能性が高いです。開発費用をかける前に、まず運用ルールの標準化で改善するかを確認する価値があります。

B:対象業務の選定からやり直す、または専用の仕組みを検討するを選ぶのは、運用ルールを整えても手戻りの原因がツールの精度や業務との相性そのものにある場合です。たとえば、入力する情報が毎回大きく異なる業務や、専門的な判断を要する業務では、汎用的なAIツールでは手戻りが減らないことがあります。このような場合は、対象業務を絞り込み直すか、業務に合わせた仕組みの構築を検討する段階に入ります。

評価の期間と範囲を決めておく

効果測定は一度きりで終わらせず、一定期間を区切って継続することが重要です。期間が短すぎると担当者の慣れによる変化なのか、ツールそのものの効果なのか判別できません。目安として2〜4週間程度を一区切りとし、その間の作業時間と手戻り件数を記録し続けることをおすすめします。ただし、業務の規模や繁忙期によって適切な期間は変わるため、自社の業務サイクルに合わせて調整してください。

評価の範囲についても、対象業務全体ではなく、まず一つの工程に絞ることで、記録の負担を抑えながら判断材料を得やすくなります。

導入判断の前に確認したいチェックリスト

  • AI導入前の作業時間を記録または推定できているか
  • 作業時間は着手から完了までの一連の流れで測っているか
  • 手戻りの件数と内容を「AIの誤り」と「確認漏れ」に分けて記録しているか
  • 特定の担当者だけに効果が偏っていないか確認したか
  • 運用ルールやテンプレートの見直しを試した上で判断しているか
  • 評価期間を区切り、業務の繁閑も考慮して結果を見ているか
  • 対象業務を広げる前に、一つの工程で効果を確認できたか

作業時間と手戻りを具体的な記録として残すことで、AI活用の効果を感覚ではなく事実として確認できます。運用改善で足りるのか、業務の選定や仕組みの検討が必要なのか、判断に迷う場合はお気軽にご相談ください。

→ TSUNAIDEに無料相談する