「名刺〇枚獲得!」で盛り上がる打ち上げが、私は少し怖いんです。
枚数を追った瞬間、接客は必ず雑になる。とりあえずスキャンして、粗品を渡して、はい次。1日立ちっぱなしで足がパンパンになっても、その名刺の山から翌週の商談が生まれなければ、それはただの紙束だと思っています。
100社近い展示会に伴走してきて分かったのは、成果が出る展示会と出ない展示会の差は、当日の派手さではなく、会期前・会期中・会期後の3つの戦場を全部やり切れるかどうか、それだけだということです。派手な設計は要りません。当たり前のことを、当たり前にやり切る。地味な話です。でも、これで数字は倍以上変わります。
「回収できた展示会」とは
本記事では、会期後4週間以内に商談化を20件以上作れた展示会を「回収できた展示会」と呼びます。出展料に対して、翌週から売上に向かう動きが残せたかどうか、が基準です。
会期前——「回収する仕組み」を先に決めておく
① 目的を「名刺の枚数」ではなく「次の日程を握れた数」に置き直す
枚数を目的にした瞬間、スタッフは全員に声を張り、雑に接客するようになります。ずっとこれを目撃してきました。当日カウントするのは1つだけ。「その場でカレンダーに入った次の日程の数」です。他は、原則見ません。
② ターゲットを、来場者ではなく「決裁に絡む一人」まで絞る
「製造業の情シス」では、まだぼやけています。「従業員300名以上の製造業で、現場の運用を持っていて、AI 導入の予算に絡む情シス部長」。ここまで解像度を上げないと、当日の最初のひと言が定まりません。
③ キーメッセージは、10メートル先から読める7語以内で
ブースの前を通り過ぎる人は、正直こちらに用がありません。「AI で営業を加速」ではなく「アポ率を3倍にする AI」。数字+動詞で、7語以内。読める距離まで縮めないと、そもそも足が止まりません。
④ 来てほしい企業には、会期前に電話をかけておく
展示会って「出展したら終わり」じゃなくて、実は3つの戦場があります。会期前の事前アポ、会期中の接客、会期後のフォロー。出展費用を回収できる会社は、必ず会期前にも人を割いています。「よかったらブースに寄ってください」の電話が、当日の"止まる確率"を大きく変えます。
⑤ スタッフの半分は、大手商談の経験がある人で固める
採用しやすい派遣スタッフだけを並べる展示会を、何度も見てきました。それだと、決裁者クラスが目の前に来た瞬間に会話が止まる。1ブースに最低1名、できれば半数を、商談を回した経験のある人で固めます。地味な話ですが、これで会話の深さが変わります。
会期中——名刺を集めるのをやめる
⑥ 声を張り上げるのをやめて、「1人」を選ぶ
「こんにちは!よかったらどうぞ!」と全員に声を張っていた頃、面白いほど素通りされました。声の大きさの問題ではなかった。通路を歩く人は、挨拶に用がありません。自分の課題にしか、足を止めない。だから、こちらのブースにちらっと目をやって歩幅が緩んだ人、現場を持っていそうな人、そこにだけ近づきます。全員に届けようとすると、誰にも届きません。
⑦ 最初の10秒を、説明ではなく「質問」から始める
製品説明をマシンガンのように喋っていた頃、相手の目がだんだん死んでいくのが分かるのに、怖くて止まれませんでした。ある日思い切って、説明をやめて質問を1つだけ投げてみたんです。「今って、何かあった時に、わざわざ現場まで確認しに戻ってません?」その瞬間、相手が前のめりになりました。接客で汗をかくのは、口ではなく耳です。
⑧ 深く話し込む1人のために、椅子ではなく「机」を用意する
椅子だけあっても座りません。図解資料をテーブルに広げておくと、自然に立ち止まって覗き込みます。話が始まったら、そこに座ってもらう。この動線がないと、立ち話のまま「また今度」で終わります。
⑨ その場で iPad を開いて、次の日程まで押さえる
展示会の後って、出展社から一斉に御礼メールが飛びます。こちらのメールも、必ずその山に埋もれます。返信が来る頃には2週間経っていて、相手の熱もとっくに冷めている。だからその場で、「仮でいいので、一番動きやすそうな枠だけ今押さえませんか。ボタン一つで、いつでもキャンセルできますから」と言い切ります。押し売りみたいで最初は怖かったですが、熱があるのは間違いなくブースの前にいる今です。
⑩ 名刺の裏に、その場で"温度"を1〜3で書く
翌日のフォロー優先度を決めるための、地味だけれど最重要のデータです。会期後にまとめて振り分けるのでは、もう思い出せません。その会話が終わった直後に、名刺の裏に鉛筆で1〜3を書き入れる。ここを面倒がると、翌週の動きが全部ぼやけます。
会期後——「動きたくない夜」に、勝負が決まる
⑪ 会期が終わった夜のうちに、翌日の一本目を仕込む
展示会が終わった日の夜は、正直もう指一本動かしたくないんです。声は枯れて、足はパンパンで、頭の中は「早く帰って寝たい」しかない。
でも、その日のうちに必ずやると決めていることがあります。交換した名刺を、翌営業日にどの順番で電話するか、リストにしておく。一度だけ、疲れに負けて「整理は後日でいいや」と鞄に入れっぱなしにしたことがありますが、数日空けてかけたら、相手はもう別の何十社と話した後で、こちらの記憶なんて残っていませんでした。現場の熱は、想像以上に早く冷めます。
⑫ 温度3(ホット)には、翌朝、代表もしくは責任者から手打ちで送る
自動化は温度1〜2まで。温度3は、代表もしくは営業責任者が名指しで、手打ちのメールを送ります。件名に 「本日中に」 と入れる。差し込みの一斉配信を、この一通に混ぜてはいけません。
⑬ 温度2には、24時間以内に AI で個別化した提案を送る
展示会で聞いた課題をキーに、AI で各社向けの提案文を作り、営業が10秒だけレビューして送ります。1日で50社に個別提案を出せる仕組みです。派手さはありません。ただ、これがあるかないかで、翌週の商談数が変わります。
⑭ 温度1にも、必ず1通は送る
温度1でも、時期が変われば温度3になります。3ヶ月に1回のニュース配信リストに必ず入れておく。「今回は縁がなかった」で名刺を捨てる会社を、何度も見てきましたが、あれは本当にもったいないです。
⑮ 会期後2週間で、成果レビューを1時間だけやる
やらないと、次の展示会で同じ設計ミスを繰り返します。反省会でいちばん最初に見るべきは、ブースの写真ではなく、「名刺をもらってから、何日で一本目をかけたか」の日付です。それを並べるだけで、翌年の成果は変わります。
展示会は「出展したら終わり」ではなく、
回収するまでが展示会だと思っています。
回収できる展示会は、地味の積み重ねでできている
ここに書いた15は、どれも派手ではありません。書き出してみると、誰でもできそうなことしか並んでいない。でも不思議なもので、これを「全部」やり切っている出展社さんに、私はほとんど会ったことがないんです。1個ずつは簡単なのに、会期の前・中・後を漏れなくやり切るのは、想像以上に難しい。派手さで差がつかない場所ほど、この地味の積み重ねで差がつきます。
TSUNAIDE では、この15の設計を組み込んだ展示会支援を、会期前から会期後まで一気通貫でお引き受けしています。派手な提案はできませんが、当たり前を最後までやり切ります。
ここに並べた設計は、それぞれ単体でも掘り下げています。そもそもどの展示会に出るかで迷っているなら 出る展示会を間違えると、全部が無駄になる から。出ると決まっているなら、会期までの逆算は 展示会の準備は、3 ヶ月前から逆算する、当日のブースでの動き方は 展示会の声掛け、やめた 5 つのこと、会期後の追客は 展示会のフォローメール、文面より先に決める 3 つのこと にまとめています。気になるところからどうぞ。