堀野 正樹さん(Horino Masaki)
株式会社みらいマーケティング本舗 代表取締役 / 外部CMO・ECコンサル
兵庫県出身(加古川にゆかり)。会社員として約20年、ほぼマーケティング一筋。ウォーターサーバー事業では年間10億円以上の予算権限を預かり、事業を年商70億円規模に。44歳で独立し、現在は独立5期目。外部CMOとして、サブスクなどの継続課金モデルの企業を中心に「売れる仕組み作り」を伴走支援。著書『ひとりマーケターの教科書』。

経営者100人インタビュー、今回のゲストは みらいマーケティング本舗の堀野正樹さんです。堀野さんとは、私が最近入ったXのマーケター向けコミュニティでのご縁。実は堀野さんも、私が秘書として動画に出ていた頃のことをご存知で、「あの方でしたか」と一気に距離が縮まりました。しかも二人とも兵庫県加古川市にゆかりがあって——私は大学のボート部で加古川に通っていた側、堀野さんは加古川で暮らしていた側。冒頭からすっかり打ち解けて、その浮き沈みを、想像以上に正直に話してくださいました。

— この回のハイライト

収録33分から、要点だけ6つ

  • 23歳、出版社時代は「いかにサボるか」ばかり。27歳の転職でマーケに目覚める
  • 33歳、意気込んで入った大手に馴染めず退社。次の会社も半年で倒産。37歳のウォーターサーバー会社が転機に
  • まず小さな成果で信頼を得て、最後は年10億円以上の予算権限を任される
  • テレビCMをやめ、1万サイト以上のアフィリエイトへ全振り。比較検討で選ばれる設計へ
  • 数字で天狗になり嫌われた頃、社長の「感謝がないと誰もついてこない」が刺さらなかった
  • 1年目の経営者へ——「原点に立ち返る。半径5メートルの人を本気で応援する」

Q1|まず、いまのお仕事から教えてください

— 金子
経営1年目の私が「教わる側」で伺う企画です。まず、いまのお仕事から教えてもらえますか。
— 堀野

みらいマーケティング本舗代表の堀野です。会社員として20年弱、独立後も5期目、ずっとマーケティングばかりやってきた人間です。いまは大企業も含めて、マーケティングの戦略作りから、場合によっては組織作り、商品のコンセプト磨きまで。短期で売上を伸ばすというより、中長期の成長をどう導くかを一緒に作る仕事です。

Q2|「サボってばかり」だった20代からの転機

— 金子
キャリアの流れを、23歳、33歳、37歳あたりで順番に伺えればと。
— 堀野

22歳で大学を出て、1年間はいまで言うニートみたいにフラフラしていました。23歳でアルバイト先の出版社にそのまま社員で入ったんですが、本当に志の低い時代で。サボってばかりでした。

27歳で旅行関係の会社に転職して、そこでいまで言うマーケっぽいことをやるようになって、仕事に目覚めた。「マーケティングでやっていこう」と決めたのが27歳です。ところが33歳で大手に入ったら、仕事の進め方や社内政治、人間関係にまったく適応できなくて。テンションが下がって「あいつダメだね」という感じになって、馴染めずに辞めてしまった

その後、一社挟んだんですが半年で倒産。どうしようという時に、妻の実家がある加古川に、ウォーターサーバーの会社があった。37歳でご縁があって入社してから、44歳で独立するまでの7〜8年、昼夜問わずゴリゴリ働いて、マーケターとしての実績と数字を積みました。

Q3|「小さな成果」で信頼を積み、年商70億まで

— 金子
7年で70億まで伸ばした、というのはどうやって?
— 堀野

入った時は「お手並み拝見」で、地方の企業だからマーケティングって何やねん、という状態でした。だから僕がまずやったのは、小さな成果を出して「こいつすげえな」と思わせること。本当はもっと優先順位の高いこともあったんですが、一番わかりやすいのがホームページで、改善したら数字がすごく変わった。「口だけじゃなくやってくれそうだ」という空気ができると、「じゃあ次はこれをやってみな」と次の仕事を任せてもらえる。最初はボールペン1本買うにも稟議が必要だったのが、最終的には「10億預けたら堀野君70億作ってくれるよね、よろしく」と。

もちろん僕自身に特技があったわけじゃなくて、優秀なパートナーをメンバーに固めて、僕は監督として「その人たちにどう動いてもらえばいいか」だけをやる。事業に応じて得意なメンバーを集める。だから、マーケターなんだけどマーケティングは自分ではほぼやっていない、という7年間でしたね。

— 堀野

戦略でいうと、ウォーターサーバーって、消費者は自分がどのブランドを買っているかもよく分かっていないんですよ。差別化ができない。顧客に聞いてみると、9割の人が比較サイトやアフィリエイトを見て判断していると分かったので、テレビCMの予算をほぼ全部アフィリエイトに突っ込んだ。1万サイト以上と連携して、比較検討の時に選ばれやすい状態を作った。他社がCMを打っても、うちの商品が売れる。この設計にしてから飛躍的に伸びました。「認知→育成→CV」という教科書が通用しない業界だと見えたのが大きかったです。

Q4|数字で天狗になって、嫌われた頃

— 金子
noteに、実績に天狗になった時期のことも書かれていましたよね。
— 堀野

この時期、数字を作って天狗になっていました。人よりも数字、数字、数字で、自分の存在意義が「数字を出せること」だけにしかなかった。周りは誰も相手してくれないような状態で。でも僕は年間10億円以上の発注権限を預かっていたので、「堀野さん堀野さん」と寄ってくるのを、信頼されていると勘違いしていたんです。

社長が「支えてくれる人がいないと、感謝の気持ちを持たないとダメだよ」と言ってくれていたけど、「いやいや、ついてきてるじゃん」と思っていて、当時はまったく刺さっていなかったですね。

会社の看板に点いてきてくれているのを、
「信頼されている」と勘違いしていたんです。

Q5|独立を決めたきっかけ

— 金子
営業経験ゼロから、どう独立に踏み切ったんですか。言われても踏み出せない人が多いと思うんです。
— 堀野

独立か転職か迷っていたんですが、実績を出せたおかげで正社員のオファーが数社から来て。「業務委託でもいいですか」と聞いたら、2社が「それでも来てほしい」と。最低限の食い扶持が確保できたのがきっかけです。

もう一つは、会社員時代ずっと感じていたモヤモヤ。頑張っても最終的に会社に生殺与奪を握られている感覚。人と違うことをやろうとすると組織では叩かれる。バリ島で同僚に「起業家向きですよ」と言われたのが最後の後押しで、意識し出したら3人くらいから同じことを言われた。全部自己責任のこの世界が、すごく性に合っていたんです。独立と同時に子供が生まれて周りは反対でしたが、「1年ダメなら会社員に戻る」でスタートしました。

Q6|『ひとりマーケターの教科書』と、外部CMOの仕事

— 金子
いまは外部CMOとして、どんな企業を支援されているんですか。
— 堀野

営業が一切できないので、ほぼXと書籍からのインバウンドです。大手企業さんから、個人事業主に近い会社さんまでバラバラ。特に得意なのが、サブスクなどの継続課金モデル——ウォーターサーバーや浄水器のように、1回売って終わりでなく、長く使ってもらって利益を出すビジネスです。

やることは「売れる仕組み作り」。まず現場を徹底的に調査して、クライアントより現場に詳しくなる。「うちの商品はこんなにいい」とPRしていても、お客さんに全然刺さっていないことが多い。調査して刺さる切り口を見つけ直し、どこで認知され、比較検討でどう勝てば売上が伸びるか——KPIまで設計する。ただしこの時点では仮説なので、小さくテストして、数字が出てから広告を増やす。広告は、勝ち筋ができる前に打つと絶対にダメなんです。ある企業さんは3年でリード数が25倍になりました。AI時代だからこそ、ユーザーの生の声(UGC)が一番強いと思っています。

面白いのは、なぜか大学・旅行・住宅といった「マーケが不得意で、リクルートが強い業界」からの相談が集まること。「まさに自分がその会社のCMOだったらどうするか」を、20年の経験を生かしてオーダーメイドで組み立てる。一言で説明しづらいのが悩み、と笑っていました。

ちなみに著書は「事業会社で孤独に戦うマーケター=当時の自分」に向けて書いたそうですが、裏目的は「経営者に読んでもらうこと」。現場がいくら頑張っても経営者の理解がないと進まないから、と。アンケートでは読者が経営者・企業担当者・フリーランスで綺麗に3分の1ずつ。狙い通りでした。

Q7|経営1年目の私に、ひとつだけ

— 金子
最後に、経営1年目の私にひとつだけ教えていただけるなら、何ですか。
— 堀野

これは僕もまだ駆け出しで、最近ふと感じたことなんですけど。成長しなきゃと意欲が高くて、すごい経営者にお会いすればするほど、自分がぶれてしまっていた時期があったんです。みんな言うことが違うから、ブレブレになって。

だから今は原点に立ち返って、周りがどう言おうが、自分がやりたいことをやろうと決めた。売上規模はもう目指さない。それより、noteにも書いた「半径5メートルに入ってくれる方を本気で応援する」。10億、100億を目指すと、そうでない人も無理やり書き集めないといけない。それはやりたいことでもない。まず自分を満たさないと、本気で周りの人を幸せにできない——そこに気づけたんです。

——「周りの評価を気にしすぎていた。すごいねと言われたくて」。そう振り返る堀野さんの言葉は、経営2ヶ月で「すごい経営者」に会い続けている今の私に、そのまま突き刺さりました。サボりから休職、70億、天狗、そして原点回帰。これだけ落ちて、上がって、また落ちて、を正直に見せてくれたこと自体が、一番の励ましでした。

ご著書のご案内。
堀野さんの『ひとりマーケターの教科書』は、社内にマーケ担当がひとり——という方はもちろん、その上司である経営者にこそ読んでほしい一冊です。

(収録:2026年8月6日 / 収録時間:約33分 / 収録形式:Google Meet / 構成:TSUNAIDE 編集部)