展示会のブースに立っていると、1日に何十回も聞く言葉があります。「資料、送ってもらえますか」。私は最初、これを素直に受け取っていました。名刺をいただいて、後日メールで資料を送る。丁寧に対応しているつもりでした。でも結果はどうだったか。返信率はほぼゼロです。資料を送って終わり、そこから先に進んだ商談はほとんどありませんでした。

「資料ください」は、多くの場合、断り文句です。目の前の営業から離れるための、一番おだやかな言い方なんです。ここに気づくまで、私は何十件もの見込み客を取り逃がしていました。

「資料ください」の9割は建前だと思って動く

まず前提を変える必要があります。「資料ください」と言われた瞬間に、「本当に検討している」と「その場を離れたいだけ」の2パターンがあると疑ってください。見分け方は簡単です。相手の足が止まっているか、目線がこちらを見ているか、質問が一つでも出ているか。これが揃っていれば本気度は高い。逆に、名刺交換の直後に反射的に「資料は」と言われた場合は、ほぼ建前です。

建前だと判断したら、資料を送る約束はしても、そこで終わらせません。私はこう返します。

「もちろんお送りします。ちなみに、今おっしゃっていた〇〇の課題って、今も紙で管理されてたりします?」

資料を送る約束はしつつ、会話を一歩だけ前に進める。ここで具体的な業務の話が出てくれば、それは本気度が上がったサインです。出てこなければ、無理に追わずに資料送付だけで区切ります。ここの見極めが、後の商談化率を大きく左右します。

判断の分かれ目は「固有名詞が出るかどうか」

本気か建前かを一番はっきり分けるのは、相手の口から固有名詞が出るかどうかです。「うちの展示会だと毎回、名刺は集まるんですけど商談につながらなくて」のように、自社の具体的な状況を話し始めたら、これは資料送付では終わらせません。その場で次回の予定を聞きます。

「その話、詳しく聞きたいので、来週あたり15分だけお時間もらえませんか。資料はその時に画面共有しながらお見せした方が早いと思います」

逆に、相手が「へえ、いいですね」で終わる相槌しか返してこない場合は、無理に日程を切り出しません。ここで押すと、かえって「営業がしつこい」という印象だけが残ります。資料送付だけで丁寧に締めて、追客のリストに回す。この線引きを曖昧にすると、現場のスタッフは全員に同じトークで粘ってしまい、結果としてブース全体の対応数が落ちます。

資料を送るだけで終わらせない仕組みをつくる

TSUNAIDEでは、展示会の成果を名刺の枚数で測りません。「次回商談の日程を確定できた件数」だけを見ています。これは当社支援案件・2026年時点の実績値ですが、設計込みで支援した展示会では、1回あたり平均20件の商談化につながっています。この数字は、会場での会話の質を上げただけでは出ません。会話の後、資料を送るタイミングと文面まで含めて設計しているから出る数字です。

正直に言うと、地味な作業です。相手の温度感に応じて資料の送り方を変え、送った後のフォロー文面まで事前に用意しておく。これをやるかやらないかだけで、結果が大きく変わります。テレアポの世界でも同じことが起きています。リスト設計を見直しただけで、アポ獲得率が0.6%から3.2%まで上がった案件がありました。これも当社支援案件での好調時の実績値ですが、共通しているのは「相手の温度を見極めてから動く」という、当たり前だけど誰もやりきれていない作業です。

AIを使っても、最後は人がやりきるかどうか

当社はAI開発も手がけていますが、この場面でAIに任せているのは「温度感の一次仕分け」までです。名刺交換後のメモや会話内容をもとに、本気度を機械的にスコアリングする仕組みは作れます。実際、試作から本番運用まで移行できた案件は82%あります(当社支援案件の実績値)。ただし、その先の「送るべきタイミングで、送るべき言葉を選んで送る」部分は、今も人がやっています。ここを機械に丸投げした会社ほど、資料送付後の返信率が落ちる傾向を私は現場で見てきました。結局、最後にやりきるのは人なんです。

実務チェックリスト

  • 会期前に温度別の資料送付テンプレを3種類つくる
  • 「資料ください」と言われたら足の向きと目線を確認する
  • 固有名詞や具体的な業務課題が出たらその場で日程調整に進む
  • 建前と判断したら深追いせず資料送付だけで区切る
  • 資料送付後24時間以内にフォロー文面を送る
  • 名刺の枚数ではなく次回商談の確定件数を毎日集計する
  • スタッフ間で本気度の見極め基準を会期前にすり合わせる

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